Chefの界隈で起きた事件について日本語で書いておく
これは2019年9月に起きたChef関連OSSの削除騒ぎの経緯を個人的に記録するための記事である。この記事はどちらの立場にも立たず、確認できた記事の内容を記載するにとどめる。
記載している2019年9月24日現在、事態は進行中であり、変更が確認されれば更新していく。
2019/09/17
Chef社とアメリカ合衆国移民・関税執行局(以下ICE)との契約についてのTweetがなされる。
hey @chef can you please provide a statement on your $100k contract with ICE, as documented here: https://t.co/x1awrUmVEt
— shanley #NoTechForICE (@shanley) September 16, 2019
2019/09/19
chef-sugar をはじめとしたChef関連のRuby gemがrubygems.orgから削除された。これは元Chef社員(現GCP)のSeth Vargoによるものだった。
これまで(GithubおよびRubygems上では)Vargo個人のgemとして開発されてきたgemの一部について、Chef社から(法的権利を主張する書類とともに)Ruby Centralへ権限移管の要求があり、これをRuby Centralが受け容れたことが発表されている(2019/09/20)。
これらgemの元々のownerであったVargoはchef-sugerレポジトリで声明を発表しており、Chef社がICEとの$95,500の契約を行ったことが引き金となったとのこと。
Vargoの主張ではICEが非人道的な扱い、人権の無視、子どもの勾留などを行っており、これらの邪悪な目的のために自身のコードが利用されないようにとChefのエコシステムからコードを削除した旨が記されている。
この後、Google、Apple、AWS等の社員らしき人物らからの賛同のreplyがみられる。
Cancel the contract, Corey. This is super clear - not a time for mealy brand tweets about “uncharted territory.”
— scott andreas (@cscotta) September 21, 2019
#ChefSupportsICE @chef cancel your contract with ICE!
— Lee Pêgas (@pegaslee) September 21, 2019
Chef CEOのBarry Cristの記事(CristからChef全社員に向けて送信されたメール)によると、この削除によって社内は大きく影響を受けたようである。
2019/09/20
この後Chef社側がいくつかの対応を行った旨が発表されている。これは2019/09/20付け、Chef社のCTOであるCorey Scobieによる記事である。
Vargoによる削除後、Rubygemsに別名、新バージョンでのgem releaseを行っており、その後名前空間をRubygemsへの要求で取得し、元の名前で過去のリリースを復元させたと記されている。この途中、Authorまで勝手にChef Softwareに書き換えてしまい後ほど元に戻したらしい。
またここではChef社がRuby Centralに提出した権利の帰属を示す書類として、Vargoの雇用日が分かる書類、署名された情報および発明の専有に係る合意の書類であることも記されている。
2019/09/23
さらに2019/09/23付けでCEOのBarry Cristからの記事が出ている。
これもCristからChef全社員に向けて送信されたメールの本文とのことであり、Chef社は人権侵害に反対するものであること、多くの社員が今回の契約に反対し、会社を変えようとしていることへの感謝を表明している。
また、今回の契約については履行するものの、来年のICEとの契約更新は行わないことを決め、さらにこの契約による収益は全て家族の分断や勾留の影響を受けた人々への支援へと寄付することも表明された。